鉋刃の耳の調整
鉋の耳を左右対称の大きさと角度に落とせないと言う方のご質問がありました、多くのかたからこの質問が有りましたのでこのページで説明します。
なぜ鉋刃の耳を落とすのか、それは、刃を研ぐと刃先が広がり耳が小さくなります、広がった刃先は押さえ溝に乗り上げ、その部分で切れた鉋屑は上に抜ける事が出来ず、鉋は引くことが出来なくなります、つまり、絶対に切れないので、鉋刃の耳は適切な巾に削らなければなりません。
鉋刃の両端にある耳の綺麗に落とすには、やはりグラインダーが必要でしょう。
ただし、グラインダーに鉋刃を保持する台が無い場合、同じ角度と大きさで左右対称に耳をそろえる事は難しいので、角度を固定できる冶具を作る事をお勧めします。
鉋の耳の理想
- 下記の画像は鉋刃の刃先が台にかかっているのが確認できます。
- 矢印の部分が台にかかっているところです。これはまだ少ない方です。
- 鉋を引くと削れた部分の鉋屑が刃口を通して台の上に出てきますが、鉋の巾一杯に屑が出た場合、矢印の部分の屑は上に出る事ができません。
- ほんのちょっとの事なのですがこれで鉋が引けなくなります。
- そこでこの部分を斜めに落とし刃先の切れる部分を鉋台の刃口の巾に合わせ、切れた分の鉋屑がすべて上に上がる様にします、下記の赤点線のようにします。
- 鉋台の刃口の部分を押さえ溝にまで広げてしまった鉋台を見ますが、それでは一見屑ははけそうですが刃口の部分だけが広がっただけで上の方は同じ巾です。
- 結局鉋巾いっぱいに削った場合、その部分を起点に屑が将棋倒しのように溜まってしまうのです。
- この鉋の耳がだんだん少なくなり刃先が鉋台のかかってしまう現象は、鉋の刃が研ぎ減れば自然と起こる現象ですので定期的に耳を削て調整します。
治具 とグラインダーの活用
- 鉋刃の耳を落とす方法はグラインダーを使うのが最適です、グラインダーに刃を当てれば焼きが甘くなると思われる方もおられますが摩擦熱が起こらないようにし、焼き戻しの温度まで上がらないなら良いのです。
- 下記画像のグラインダーの手前にある長方形のダイヤブリックを使い、摩擦熱が起こらないようにすれば問題ありません。
- 決まった角度に砥石で研ぎ下ろす事は大変手間のかかる事です、グラインダーは刃物のメンテナンスには必要な道具です。
- 下記は店主のグラインダーです、グラインダーには、鉋の角度が一定に決まる治具を取り付けています。
- 砥石の磨耗により当たる角度が変わってきますので角度は変化できます、右に鉋刃の裏の叩き出し用の金床とヤスリがけに使う小型の万力を付けています。
- 台の下には金属切断などに使うディスクグラインダーの箱。
- 下記画像のラインは角度の目安にしてください、赤の点線を水平に考え、緑の点線の鉋治具の定規盤の傾斜角度は30度ほど、グラインダーとの接点の角度もありますが、それぐらいが目安です。
- あまり角度を付け過ぎると、耳の面がべたっとなってスッキリしません角度はネジで調整できるようにしています。
鉋の耳を落としたところ
- 実際に鉋の耳を落として鉋台に入れたところです、耳の角度が決まり、直線に落ちている事が良く分かります。
- 耳は多めに落とします、鉋刃を研げば刃は研ぎ減り新品の時と同じように刃先が鉋台の押さえ溝に乗り上げるからです。
- それと台上場から覗き込んだ時に裏金を締め込むと裏金の二段研ぎが邪魔して、締まり具合が見え難いので多めに落としておくと刃口側からも確認できます。
- 逆目を止めるために裏金を締め込むと、鉋刃の先に届くほど締め込みますので見え難いのです。
- 耳を落とすタイミングは本来は裏押しした時にいっしょに落とすのが良いです、下の画像上段は耳を落とした時として、下段の裏金の先まで鉋刃の刃先が研ぎ減った時(矢印部分まで)、刃先の巾と裏金の巾が揃います、これ以上鉋刃を研げば更に耳は小さくなり押さえ溝に刃先が乗り上げ削れなくなります。
- 次回はここまで鉋刃先が減った時に耳を落とします、ちょうどこの頃に鉋裏も無くなりますので、鉋を調整するのに丁度良いタイミングなのです。
- 裏押しする時は鉋の人間ドックと同じように各部の調整をする時期なのです、刃口を埋めたり片出するときは表馴染みを削ってみたり、刃の仕込が甘ければ敷物を入れたりします。
- 無論、鉋下端の台直しもします。
鉋の耳を落とす治具
- 下記の冶具は一つの例で、ご自分のグラインダーに合った冶具を作り、鉋の耳を適切に揃えてください 、フリーハンドでは決まり難い角度を決められます。
- グラインダーは鉋の三つの角度を決めるる時に、それぞれの角度に変えて使用します。
- Aと同じ角度を使い、刃こぼれした鉋刃の中透きを行うと、切削面積が減り、砥石に移った時、荒研ぎが楽です。 刃が丸研ぎになった時も、中透きを行うと、治ります、グラインダーのすり跡は、何度か研ぐと消えます。
@耳落とし
A適切な刃角にするための、中透き
B裏刃の適切な角度にするための中透き
ダイヤブリックの必要性
- 鉋の地金が削れた金属が、砥石に入り込み摩擦して発熱します。
- 鉋刃の発熱を押さえるには、ダイヤモンドブリックを使います。
- 回転しながら当てます。
- 刃角が浅いと鋼の部分にグラインダーが当たりますので、先端まで当たる時は、当たる前に一度砥石で研いで、再度グラインダーに当てる事を繰り返してください。
- ダイヤモンドブリックを使った後は、触れるぐらいの発熱で刃先への影響は出ません。
- 砥石が削れて変形したときも、ダイヤモンドブリックで、整形します。
治具の形
作り方は簡単ですので、画像を参考にしてください。お手持ちのグラインダーに合せて寸法は変えて下さい。下記は例です。
側面から見た所
- 台が長いのは固定のためFクランプを挟む部分 、角度によって治具本体を押し込んで、固定する場合もある、又その逆も。
ネジ穴は左右重ねて開ける
- 内側の蝶ネジは固定します、蝶ネジで角度を変えて鉋を当てる角度を調整し決めます
- 左右の立ち上がり板の間にグラインダーが入る。
- 機種により各部の寸法は変わる。
定盤部分
あまり広くなくて良い。
下面
- 難しくはないので、皆さん作っって下さい。
- 合板の方が、木材より曲がりにくく良いと思います。