鉋台の締り
新しく鉋を仕込むにあたり、台の締りは確認する重要点の一つでありますし、使っていくうちに乾燥により収縮し、刃の幅方向に締りをもたらします。鉋をメンテナンスする際に、使い始めてから3か月は台の締りにを観察しなければなりません。
鉋の巾方向に締りが出て圧迫がかかりますと、台の割れや、頭を横から叩いての片出の調整ができませんし、表馴染みの硬さに幅方向の硬さが加わり、表馴染みを削っても仕込みの硬さが緩まず、幅の締りを緩めた時には、表馴染みが緩くなり最悪使うことが出来なくなります。
鉋の台の部分は樫の木でできています。良く乾燥させられてはいますが、木の性質上、加工して掘った部分から更に水分が抜けて乾燥し、その部分が収縮します。
鉋を購入された時点でどの程時間経ち度乾燥が進んでいるかにより、その後刃巾と台の溝巾の締りで溝巾の余裕が変わります、下記の画像の矢印の部分です。
木は乾燥と共に巾方向に収縮しますが、刃は金属ですので基本的に収縮はしません。鉋の刃を台に入れる時点では矢印の部分に余裕を持たないのが普通で、購入された方が余裕は決めて鑿を入れます。
ここでは鉋刃と台の溝の部分の隙間に関する注意点をお話ししたいと思います。
時間が経ってない台
鉋は樫材に刃の入る部分を掘ってその部分に刃を入れる訳ですから、鉋台を作って時間が経ってない台は内部の乾燥が進んでいない部分が露出します。そのため仕込むその時は影響は無いのですが、使っているうちに徐々に巾が締まってきます。 最初から溝幅を広く作ると刃を叩き込むときに左右に揺れたりしますし、あとどれだけ締まるか分かりませんので、作る時は余裕を持ちません。
経過観察点
- 新しい鉋台は乾燥が進んでいないために徐々に溝幅と鉋の巾の余裕が無くなってきますので、使って行った時、台の上から見て溝に左右隙間が無いようであれば、溝に入る鑿を使い溝巾の刃の幅が当たる部分が黒くなった所だけ鑿で突き取ります。
- もし使っているうちに溝の幅が片方だけ狭くなってきたら、それはぐ時に左右の手の研ぐ力のバランスが悪く片研ぎになっています。この時は溝はいじらずに、手の力の入れ方を替えて、片研ぎで残った方側に力を入れて研ぎ、刃の傾きを直しましょう。
- また締まるからと多く取り過ぎない事です。乾燥の進み具合は目では見えません。もしかしららもう巾の締りは進まないのかもしれませんから。
- 使用に関しては、湿度の低い時期であれば、長く出しっぱなしにしない事や、風の通り道に置かず、部屋の隅に置くなどの配慮が必要でしょう、そうしないと、急激に乾燥が進み、台の乾燥に対して締りがついていけず、台が割れる事になります。
- 季節などにもよりますが、台の締りが収まるには3か月はかかると思いますので、その間は観察が必要かと思います。
乾燥が進んだ鉋台
店に長くあった鉋や古い鉋(中古品)を購入すると台の溝幅のはすでに締まっておりそれ以上巾がきつくなる事は少ないのです。ただ、その場合、すでに鉋刃と溝の幅はすでに無くなり刃を横から圧迫しています、場合によっては台に無理がかかりヒビが入っている場合もあります。下記画像でも分かるように、刃に押されて台の側面が膨らんでいる事が確認できると思います。
確認点
- 本来鉋刃の台に入る硬さを決めるための表馴染みなのですが、表馴染みプラス、巾の締りにより硬さが更に硬くなっている場合があるのです。
- そっと差し込んで刃が止まった時に鉋刃が縦に動くか横に動くかを確認してください。縦に動くな台の幅が締り、幅が効いていますので、溝の幅を広げなければなりません。横に動くなら表馴染みが効いていますので溝幅はそのままで良いと思います。
- 締りが出てしまった鉋台は、仕込む時は最初から鉋刃と溝に余裕ができるように、鑿で溝を広げる事が必ず必要です。
- 先に表馴染みで硬さを決めてしまい、後で溝の幅に余通が無い事に気づき、巾を取ってしまうと、おそらく刃の入り具合は甘くなてしまうでしょう。こなってしまうとせっかくの新品も調子よく使う事ができませんしま最悪台は打ち替えです。
鉋溝を突く時の注意点
- 下記の画像で分かりますが、鉋刃の当たっている部分が黒くなっています。鉋の刃はどれでも刃先巾の方が少し狭くなっていますので、機械掘りの鉋台は溝が並行なため上の方だけ黒くなるのです。
- 手掘りの鉋台の場合は、鉋の幅のテーパーの具合に合わせて掘りますので、全体的に黒くなっているかと思います。手掘りの場合、逆に頭を叩いた時、刃先の遊びをなくすために先の方が黒くなっているかもしれません。
- この黒い部分だけ鑿で差して取れば良いのです、黒くなっていないところは刃が当たっていないところです、この部分は鑿を当てる必要がありませせん、逆に余分にこの白い部分を取ると、無駄にゆるくするだけです。刃先は巾が狭いので自然に手掘りに近い溝の状態になります。きつい黒い部分を取れば、溝の幅は上で広くなり、刃口付近では狭くなり、刃と同じような巾になります。
- 使う鑿は1分〜2分を私は使っています、刃先の角が大事ですので充分に研ぎあげて使って下さい。
- 溝の余裕は先の方ではほとんど無く、台の上の方で若干あるぐらいが理想です。
裏金の幅の締り
- 裏金の収まる屑溜まりの幅もいっしょにせまくなっていますので屑溜りの内側も広げる必要があります。
- 削る時に鉋の刃先と裏金の刃先が揃わないようであれば逆目は止まりません。
- 裏金の右か左を叩いても動かないのなら屑溜まり部分の幅の余裕が無くなったのですから、この部分も鑿で突き取ります。
- 乾燥が進み締まってしまった場合は、鉋刃を抜いても裏金が落ちてこない事もありますので直ぐ分ります。
- 又、屑溜りの側面に裏金が削った痕も残っていたりします。
まとめ
- まとめを言うと鉋刃を台に入れて時間が経っていない台は締りの経過観察を。そして新しいうちは直射日光はもちろん、風の通り道にも置かないようにしましょう。
- 時間の経った品物は巾の余裕を作るようにしましょう。溝の幅は必要以上に広げすぎないようにして、横から玄能で打って調整しても無理な時は、溝を広げず、研ぎで治しましょう。
- 乾燥が進んで締まってしまった台が良いのか、掘った直ぐの方が良いかは一長一短で、どちらが良いとは言えません。
- 鉋を使いこなす上で観察しメンテナンスを続ける事はかならず必要な事です 。