鉋の研ぎ方
ここでは、木工歴30年以上、削ろう会歴10年以上の店主が鉋の研ぎ方について説明します。このページの鉋の研ぎ方は基本的な方法です。
他にも砥石の組み合わせ次第で早く研げる鉋の研ぎ方もありますが、まずは基本的な研ぎ方を覚え、それを元に研ぎ方を発展させてください。
鉋の研ぎとは摩耗した刃先の再生です、無駄に時間をかけず効率的な方法を覚えましょう。
私の鉋の研ぎに要する時間は5分かかりません、効率的に研ぐ方法を覚えれば研ぎに苦労しません。
色々なサイトには書いた人が本当に鉋が使えるのか疑問に思うページがいくつもあります、このページは研ぎ方の有意義な情報となるようにページを作っています。
鉋研ぎに使う砥石類
鉋を始め大工道具の研ぎに揃える砥石は基本同じです。現在では天然砥石はほぼ掘り終り、当たり外れない人造砥石を使うのが一般的です。
今日の鉋の研ぎに使用する人造砥石は各社競うように新しい砥石を作り出しています。画像は当店、曼陀羅屋の砥石の在庫棚。
私は若い頃に12年間建具職人をしていました、その頃から切れ止んでからの鉋の研ぎは、中砥石と仕上げ砥石の二つで、杉のシラタも光る研ぎができました。
何本も砥石を組み合わせても時間がかかるだけです、適切な研ぎが出来れば、鉋の研ぎには2本で十分なのです。
中砥石(研削)
- 鉋が切れ止んだ時にはこの中砥石から研ぎを始めます。
- 中砥石での研ぎは摩耗し鉋の刃先を一度、効率の良い粗めの中砥石で研ぎ減らし尖らせる工程です。(仕上げ砥石の高い粒度では効率が悪い)
- 基本的に鉋の研ぎでは中砥石は#1000番を使います、鉋の研ぎ方に慣れた方なら#2000や#3000を使います。
- 砥石の選択に迷ったら、曼陀羅屋、店主にご相談ください。
大工道具の曼陀羅屋の砥石販売コーナー 豊富な在庫
仕上砥石(研磨)
- 中研ぎの刃先形成で出来た傷を研ぎ減らし研磨して仕上げる工程に使うのが仕上砥石
- 粒度#8000〜#12000ぐらいの砥石を使用
- 最高の天然仕上砥石に及ばずも、ほぼ近い鋭さを作る鉋の研ぎ方ができる人造タイプもある 。
- 柔らかい桐や杉のシラタも、適切に選んで研げば問題なく切れます。
粗砥石
- 早く研削研削したい時に使用するのが粗砥石です、鉋の研ぎでは刃が欠けた時や刃先の角度を変更したい時に使用します。
- 標準的な粒度は#220番 、メーカーによっては#320などもあります。
- 一般的に砥石の面直し用にダイヤモンド砥石を使う事が多いですが、予算が無い場合には粗砥石も有効です。
- 柔らかめの粗砥石は目詰まりしませんが、硬めの粗砥石は目詰まりを起こすことがあります、そんな時は同じ粒度の研磨剤を併用します。
面直用品
- 高性能な砥石の出現で、電着系(銀色)ダイヤモンド砥石を使うのが一般的
- ダウやモンド砥石より効率は悪いですが、GC系、PA系の粗砥石も鉋を研ぐ時の砥石の面直しにも使えます。
- 柔らかめの砥石の面直しなら、ブロックに砂をまいた上で水を垂らし砥石面を直す事も出来る 。
その他
- 補助研磨材、名倉など
- 砥石台は、ぐらつかずしっかり砥石を固定するのに必要
- 綺麗な水は傷の無い刃先を作れる
- 研ぎ終わったあとの防錆用の油など
以前の説明に使ったページ
店主の鉋の研ぎ場
ここは私の鉋を研ぐスペースです、日本的に言うと研ぎ場、私は木工もキャリア35年以上です、大工道具を研ぐには必ず必要。
中には研ぎ場のない方もおられますが上手くなるためには必要です。
鉋は切れなくなったら研ぐのではなく、切れている間にこまめに研ぐのです、直ぐ欠けて研ぐのは何か原因があります。
店主の研ぎ場には鉋を研ぐために必要なものが置かれています、砥石の他に重要なのが水でしょう。
青いコンテナが二段になっている部分です、上は仕上げ研ぎの綺麗な水、溢れて下に押した水は中研ぎの粗い研ぎに使う水です。
その他、刃先の確認のための角度定規、スコヤなど。
研ぎ場のないかたには下記の画像の様なコンテナを用意されてはいかがしょう???。
名付けてどこでも研ぎ場!!。鉋の研ぎに必要な研ぎ場が無い方にはお勧め。
研いで汚れた水はスノコを通して下に落ちます、右の小さい部分はため水。
この小さいコンテナだけでも鉋が研げるように前後に木片が取り付けられており、砥石台が乗せられます。
流水が無い場合はペットボトルのキャップに穴を開けて使えば良いです。
- 持ち方
- 中研ぎ、下研ぎ
- 鉋の研ぎ方の基本形がここにあります。
- 研ぎで刃先の形状を決め、摩耗した刃先を一度返りが出るまで研ぎ尖らせます。
- 適切な角度
- 砥石の平面
研ぎ方
ここからがこのページの本来の目的の鉋の研ぎ方になります。研ぎ方は職人さん、人それぞれですが、ここでは私の方法として記載します。
私は平成30年現在、鉋歴38年ほどです、そんな私が建具職の父、叔父、従弟から教わり、他の方々との交流から今に至った鉋の研ぎ方の工程を下記でお伝えします。
鉋を研ぐ前の確認
- 日常の鉋刃の研ぎはここから始まっていると言えます、切れ止んだ刃を研ぐ前に鉋台の押さえ溝の左右の隙間の間隔を見ておきます。
- 刃が片研ぎになると矢印の隙間の開き方が変わります、新品の時は同じ間隔に仕込んでおくので片研ぎになるとわかります。
- ただ、追い柾の台は乾燥による変形が断面の四角が平行四辺形に変わり、上記の間隔が左右一定ではなくなりますので、鉋の研ぎ方は刃の出方が刃口と平行になるようにします。
- 通常は右利きの人は右の押さえる力が強く先に減りますので、若干左に力をかけて研ぎます。
- 片研ぎに気づいた時は一度に直さず研ぐ度に少しづつ直します、一度に直すと時間がかかりすぎます、片研ぎにならないように日頃から隙間は確認しておきましょう。
鉋を研ぐ時の持ち方
- 基本的に右手の持ち方はどのような研ぎ方でも同じです、左手は鉋を研ぐ時の手の置き方で若干変わったりします。
- 最初は持ちにくいかもしれませんが慣れが必要です。
- それと持った時の鉋刃を押さえる位置も大事で、押さえる位置が悪いと刃先角度の変化が早まり、研いでも切れる刃になり難くなります。
- 鉋を押さえる位置でもあなたの研ぎ方が上手くなるかを左右するのです。
研ぎ崩れがなかなか治らないなら又、元に早く戻したい、戻す暇が無い方は治具によって鉋を研ぐ事も一つの方法です。
お勧めの鉋の研ぎに使う研磨治具はこれが最適、これより上は無、これより下では役と思って間違いありません。
下研ぎ(中砥石)
- 中砥石での研削作業で気を付けなければならない事は、次の仕上げ砥石に乗せる事を考え、できるだけ平面に研ぎ上げる事です。
- ここで丸刃に研ぐと、仕上げ砥石に乗せた時も、刃先を研ごうとするためしゃくって研ぎ刃先を研いでいるようでも、実際は地金の部分を多く研いでいることになり、研いだ割には刃先は研ぎあがっていない状態になります。
- 又、丸刃になっている事を意識するため、刃先に力が入り過ぎ、砥粒で研ぎ上げると言うより砥石表面で研ぎ上げることになり、せっかく砥石からすり減らされて小さくなった研磨粒子の砥粒を生かせなくなります。
- 研ぐ時は手前から、ストロークを短くして研ぎ、少しずつストロークは変えず、前進して行きます、先に行き着いたら今度はストロークは変えず、少しづつ戻ります、これの繰り返しです。
- もし手前ばかりで研ぎ、後になって使っていない先の方で研ぐと研磨面が変わって砥石と直ぐには合わなくなります。
- 微妙に前進し、先に行き着いた時点でバックすると、鉋刃の研磨面の減りと砥石の減りが常に合った状態になります。
- この状態で研ぎ続け、返りが出るまで研ぎ続けます。
- 最初は力は入れても良いと思いますが、中ば以降は力は抜きます、これは刃に深い傷をつけないためと、出た返りの厚みをできるだけ薄くするためです。力を入れると返りも厚くなり、仕上げ砥石にかけた時、研磨しても取れにくくなります。できるだけ力は抜きましよう。
- 研削途中、刃返りが出たあと刃先が持ち上がった時は、中砥での研削を1からやり直しです、返りを手で取り去り最初から行ってください。スキーの板の先のように刃先が反りあがったのと同じ事になります。いくら仕上げ砥石で研磨しても刃先は研ぎあがりません。
- 平面に研削する自信のない方は、研削治具に固定して研削する事をお薦めします。
- 手で触って微妙に返りの出ている事が確認できるまで研ぎます。
- ポケット顕微鏡、ピークワイドスコープなど、欠けの完全に取れている事を確認しておきましょう。
仕上げ研ぎ
- 仕上げ砥ぎに移りますが、この仕上げ研ぎの最終段階になっても地金に傷が残るようなら、中砥石での研削作業の次に中間の研ぎに当たる砥石での研削作業を入れます。
- 砥石は2000番程度が良いと思います。砥石の番手を上げすぎるとなかなか傷は取れません。
- 仕上げ研ぎの方法は上の画像のように2通りあります。
- 中砥での研削と同じように刃に直角に研ぐやり方と、右のように横研ぎをする方法のの2通りです。
- この奥殿の石は研磨粒子の石英が細かく、角もまろやかなようで刃の艶も非常に綺麗に研ぎあがる石です。
- 研磨力も強いので名倉は使いません。おそらく名倉の方が粗いと思います。
- お手持ちの砥石によっては名倉の併用をします。普通は名倉を使った方が研ぎ上がりは良いと思います。このような砥石を手に入れるのはなかなか難しいです。価格はと言えば大きさもかなり大きいので、かなりな金額と言えます。
- 硬めの石が良いですが、硬目の石は水を極少なく使うか、名倉で先に砥粒を先に出しておきます。
- 左右のどちらの研ぎにせよ、水はとにかく綺麗な水を使います。地金に光る傷が入れば、砥粒を洗い流し又最初から研ぎます。水の入れ物は1の画像にもある実験用洗浄ボトルをお薦めします。
- 力は抜き砥粒で研ぐように軽く持ちます。
- 長時間研ぐとこれがきついです。時間で言えば最低30分は研ぎます。
- 刃が砥石に吸い付き、持ち上がるぐらいは研ぎますが、持ち上がるからと言って研ぎ上がったとは言えませんので勘違いしない方が良いと思います。
- 刃先を顕微鏡で見ながら研ぎを確認しますが最終的には削って見ないとわからないように思います。
鉋刃の刃先の返りを取る
- 鉋の刃先のが研ぎあがってくるに連れ、中砥での研削行程でできた、刃返りが自然に外れてきます。
- その時点で刃の裏を研ぎ上げます。余り使っていない端の平面の狂っていない部分を使用し、裏透き全体を砥石にかけ、軽く研ぎます。
- その後13の研ぎを行い、又裏を研ぐ事を繰り返します。
- 後は自分がどこで研ぎを終わるかです。
砥石の平面
- 仕上げ砥石の研磨面は下右の画像のように真ん中が下がっていてはいけません。
- 鉋刃は金属、砥石は石です、真ん中が下がった石では右下画像のように接点は黄緑色の点になります。
- 先に緑の点部分から研磨されて減り、裏が丸くなって行きます。次第に裏の平面も狂ってきます。
- これは金盤でも言える事で、薄い金盤に体重をかけて裏押しする方、同じ金盤を長年使っている方はなお更です。一度定規を当ててみてください。かならず中心部分が下がっています。
- 左下画像のように砥石の中心部分が高かったら(微妙に。)鉋刃の裏は、前後に天秤しながら綺麗に研ぎあがると思います。微妙に上がっているぐらいが、下がっているよりましです
。
- 画像でわかると思いますが、砥石研磨面と、鉋刃の裏の接している所は真中付近が浮いている事がわかるとはずです。つまり、当たっている所は先端と、カエザキ(裏透きと銘の切ってある部分の境)の所です。
- 研ぎ上げるのは先端だけで良いのです。
刃の防錆
- 研ぎ上がった刃はよく水で洗いよく拭き上げる。
- その後防錆のため油を挽く。